アスベストとは
アスベストは繊維状の、綿のように柔かな天然の鉱物で、結晶構造をしています。(左写真)
アスベストは、一般的に使われる名称で、大気汚染防止法などでは、正式に「石綿」(せきめん、いしわた)といいます。繊維状の、綿のように柔かな天然の鉱物で、結晶構造をしています。
アスベストは単一の鉱物ではなく、6種類のアスベストが知られています。一番多く使われてきたのが白石綿(クリソタイル)で、とても柔かく蛇紋岩の中にできるので、蛇紋岩系アスベストといいます。この他、角閃石の中にできるものが5種類あり、工業的に多く使われてきたのは、青石綿(クロシドライト)と茶石綿(アモサイト)です。アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトも角閃石系アスベストですが、まれにしか産出されません。角閃石系のアスベストは直線状で、蛇紋岩系のアスベストより発ガン性が強いとされています。
アスベストの有害性
石綿粉じんを吸入することにより石綿肺・肺がん・中皮腫等の疾病の危険性が高まることが知られています。これらの疾病については、石綿粉じんを少量吸入しても発症する可能性があり、また、石綿粉じんの吸入から発症までの期間がそうとう長いこともあります。(15~40年)
●石綿肺
長時間、多量に石綿粉じんを吸入することによって生じる「じん肺」の一種で、アスベスト肺とも呼ばれています。
肺が線維化するもので、せき等の症状を認め、重症化すると呼吸機能が低下することがあります。
●肺がん
石綿粉じんの吸入量が増えるほど、肺がんに罹患する危険が増加します。特に石綿肺に罹患した人は肺がんに罹患する危険性が高いと言われています。
●中皮腫
肺を覆っている膜(胸膜・腹膜)や心臓を覆っている膜(心膜)等に発生する悪性の腫瘍で、非常にめずらしい疾病です。
アスベストの種類
クロシドライト
(青石綿)
アモサイト
(茶石綿)
クリソタイル
(白石綿)
トレモライト
アクチノライト
アンソフィライト
アスベストにはアモサイト(青石綿)・クロシドライト(茶石綿)・クリソタイル(白石綿)・トレモライト・アクチノライト・アンソフィライトの6種類があります。
この6種類のうち、建築材料として使用された石綿は、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)と蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)です。他の3種類トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトは建築材料等にはほとんど使用されていませんが、他の鉱物に不純物として存在する場合があります。
アスベスト処理の流れ
調査・診断 | 改修工事や解体工事等の計画がある場合、受注者は石綿使用の有無について事前に調査を行い、発注者へ調査結果を書面で説明しなければならなくなります。 対象建築物において分析のために現地で試料採取を行い、現地で採取された吹付け材の分析は、原則としてJIS A 1481:2014 「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」に基づき行い、アスベスト含有の有無を診断することになります。 |
官公署への届出 | 関係法令等に従い、速やかに官公署その他へ必要な届出を行います。 必要となる届出は次のとおりです。 工事計画届 届出先:労働基準監督署 時期:作業開始14日前まで 特定粉じん排出等作業実施届 届出先:都道府県知事・地方自治体 時期:作業開始14日前まで |
アスベスト処理 | 調査・診断結果に応じて、以下の3つの処理方法から選定します。 ●アスベスト除去処理 アスベストを完全に取り除く工法 ●アスベスト封じ込め処理 除去が不可能な場合などに、アスベストに薬液を吹き付け、固化させ粉じんの飛散を防ぐ工法 ●アスベスト囲い込み処理 アスベストに外的要因で損傷を受ける可能性がある場合などに覆う工法 |
各種事後処理 | ●廃石綿処理 除去したアスベストを、各都道県知事の許可を受けている処分業者へ引き渡す ●特定粉じん排出等作業完了届 都道県知事・地方自治体へ施工写真・マニュフェスト・粉じん濃度測定結果を添付し、提出する |
アスベスト処理工事例(除去工事)
隔離養生
外部にアスベストが飛散しないよう、ポリエチレンシートで床面(二重)、壁面を密閉養生をします(床面T=0.15mm以上、壁面T=0.08mm以上)
作業室内に負圧・除じん装置を設置し、作業室内を常時負圧状態にします。これにより外部へのアスベストの漏えいを防ぎます。(作業場内の空気を1時間当たり4回以上交換します)
官公署立会検査
隔離養生完了後、アスベスト除去前に官公署の検査を受けます。この検査で合格しなければアスベスト除去作業を開始する事が出来ません。
この検査はアスベストの漏えいの可能性はないか、各機械等が正常に作動しているかを確認をします。
天井材解体
アスベストが天井材などで隠れている場合、天井材の撤去もアスベスト除去工事に含まれます。
天井材の上に経年劣化したアスベストが乗っている状態で通常解体を行うと、アスベストの外部飛散につながります。
アスベスト除去
アスベストの飛散を抑える為、粉じん飛散抑制剤を吹付け浸透させます。
(湿潤処理)
ヘラ・スクレーパー等でアスベストを掻き落とします。
下地に付着しているアスベストをブラシ・研磨用具等を用いて擦り落とします。
除去後の下地面に粉じん飛散防止剤を吹付けます。
同様に養生シート面にも粉じん飛散防止剤を吹付けます。
隔離養生撤去
粉じん飛散防止剤を吹付けた後粉じん濃度測定をし、結果を確認してから養生撤去を行います。